本当にファンに愛される球団とは…

10.中途半端な文化的公共財より商業主義

NPBの伝家の宝刀「野球協約」の第3条の(1)項に、野球協約の目的として、こんなことが書いてある。

「わが国の野球を不朽の国技とし、野球が社会の文化的公共財となるよう努めることによって、野球の威厳および技術にたいする国民の信頼を確保する」。

公共的文化財って、何だ?「公共財」と言うくらいだから、万人の目に触れることが可能なもの、或いは万人がそれを用いることが可能なものなのか…また「文化的」であるから、これは何人たりとも、それを侵してはいけないものであるのか…日本語には、便利なものがあって、その単語を使うことによって、妙に権威が出てきたり、誇り高さがニュアンスとして伝わりやすくなっている。公共性を求めるのであれば、何らかの形で自治体が絡んでいなければ変なのだが、実際には日本のプロ野球には、自治体は殆どタッチしていない。文化財と言えば、まず連想するのが、古くからの寺社などの歴史的建造物があるが、これらについての殆どが、法人・個人の「所有者」が居るのだが、幾ら所有者であっても勝手に文化財の破壊や改築を行ってはならない。しかし、2004年の近鉄は文化財を消滅させたので、大変な重罪である。

一方で、協約は第27条で、こんな文言もある。

「この組織に参加する球団は、発行済み資本総額1億円以上の、日本国国法による株式会社でなければならない。ただし、1980年1月1日現在の既存球団は、この資金にかんする制限から除外される」

要するに、民間企業でないといけないと言っているわけで、特に株式会社であるから、個人の大資産家や自治体、或いは公益特殊法人も全てダメと言っている。また、クラブチームの場合でも、何らかの「親会社」がいて、初めてプロ野球に参画できる資格があるということ。で、株式会社とは自らの営業努力によって利益を生み、株主や従業員に還元することを目的としているから、当然球団も同様に「商業主義」となる。当たり前だな…となると、上記の「文化的公共財」とは、ニュアンス的に乖離がある。

少なくとも、プロ野球を取巻く現状は「公共」とは言いが難いし、何も「公共」である必要はないと思う。「球団はみんなのもの!」なんてのは馬鹿げているし、「ファンのもの!」と言うのは抽象的過ぎる。それと「文化」だが、そもそも文化って何だ?人との会話の中でも、文章の中でも使われる言葉なのだが、何だかお茶を濁すような言葉ですっきりしない。近畿日本鉄道の場合「文化事業」と定義しているが、中身はラグビーなどのスポーツやカルチャースクールなど、要は本業以外の部分で、人々が趣味としている部分を率先して行う、言わば利益の還元による活動なのであろう。で、そうなると、球団は企業の所有する「文化事業」であるから、親会社の利益を還元することにより、社会貢献するから、球団は赤字を出しても良いということになる。なるほど近鉄の場合は、親会社が二進も三進も行かない状態なので、文化事業をやっていられないとして、球団を手放したのだろうが、じゃぁ阪神はどうなんだ。あそこも、親会社が赤字だけど、球団は元気いっぱい。それどころか、親会社に反して利益を出しまくっているから、文化事業にならないじゃねーか。野球協約の主旨からすれば、巨人や阪神などは、利益が出ているんだったら、入場料を安くするとかすべきであるのだが、実際は逆。需要が高いから、値段を吊り上げて、パリーグなど需要の低い者は値段を下げるなどが行われているから、これは立派な商業取引である。

いや、別に私は「商業主義」が悪いとは言っていない。どの球団も儲かって、利益を生み出して、その剰余金で、くだらない「裏金」などには使わず、選手の育成やアマチュアへの援助をして欲しいと願っている。そのためには、球団の収益源である「ファン」が、喜んでお金を落としてくれるようなイベントであって欲しいと願っている。よって「文化的公共財」という、建前は不要である。ナベツネは「『官(要は自治体)』が入ってくると、ロクなもんじゃない!」と言い切るが、概ね賛成。しかし、自治体でも協力的なところとそうでないところがあるので、言葉は選ばなければならない。その経緯は別として、大阪・兵庫のダブルフランチャイズとなったオリックスと阪神。一応、3年の時限立法であるが、要はオリックスがどちらかを選定した時点で、阪神の保護地域は「兵庫県」に戻るのだが…余談だが、オリックスは間違いなく神戸市を中心とした「兵庫県」を選ぶであろう。大阪ドームの行く末が、非常に不安があるのもあるが、先日亡くなった仰木彬氏の写真展を、神戸市役所は実施した。一方の大阪は…もう言うまい。で、そうなったとき大阪の府知事は、あのデカイ眼を更にギョロギョロさせて怒るんだろうな「阪神が大阪から出て行くのは反対!」なんてね。自治体は、選ぶ立場ではない、選ばれる立場なのだ。

商業主義大いに結構!と、大前提として思うのだが、となると様々な法整備は必要となる。野球協約では、如何様にも解釈できる記載になっているから、詳細に決め事は必要である。その場合、例えば「合併」についても制定しても構わない。それは、これこれの条件の場合で、何年前に事前告知するとか、尚且つファンクラブ総会の承認が必要だとかの、ある程度納得できる条項を加えてくれれば良いと思う。商業主義で大事なのは、収支や財務状況、あるいは運営方針をオープンにしてくれることである。