2005プロ野球かくあるべし!

11.あの騒動を、今一度検証してみたい・・・

(@何故「合併」なのか、何故「6月13日」だったのか)

既に、2005年のシーズンも開始され、新設球団の「東北楽天ゴールデンイーグルス」は、実力的な貧弱さとは裏腹に、仙台を中心とした東北地方での活況は目覚しい限りである。また、ホークスを買収した「福岡ソフトバンクホークス」は、資金力にモノを言わせた大型補強を敢行し、実力もさることながら、連日福岡ドームの盛況ぶりは変わらない。さらに、一時期そのホークスとの合併が取り沙汰された「千葉ロッテマリーンズ」の躍進は凄まじく、千葉マリンスタジアムは熱狂。本当に、リーグ優勝の可能性も高くなってきたと思う。昨年札幌移転し、2年目に入った「北海道日本ハムファイターズ」は、何か落ち着いた感じではあるが、昨年同様札幌ドームに多くのファンが詰めかけ、特に交流戦での巨人戦ですら圧倒的にファイターズファンを多く抱えている。

以上4球団が、現時点でのパリーグ「経営的側面」での「勝ち組」であり、負け組みは「西武ライオンズ」と統合して出来上がった「オリックスバファローズ」であると思われる。

昨年日本一の西武は、プレイオフ前に経営陣の背任行為が発覚し、その後検察の調査の末、ライオンズのオーナーでもあった堤義明氏が、開幕直前に逮捕。その影響があるのか、チームも今ひとつ波に乗れない感じである。そしてオリックスは、ダブルフランチャイズというややこしいシステムを導入したせいか、年間チケットの売り上げも悪く、相変わらず無料券の配布により、その場を繕っている。ましてや、平日の大阪ドームの内野席の空席具合は、昨年まで以上に悲惨な状態であり、特にそれでも満員であったライト側外野自由席も、特定の試合で無い限り、半分程度しか埋まっていない。西武・オリックスとも、楽天・ソフトバンク・日本ハムなどと比べ、非常に印象が悪い球団であることが、大きな要因であるが、その印象を悪くしたそもそもの原因は、昨年勃発した近鉄・オリックス合併問題から端を発した騒動であることは、言うまでもない。

あの発表から1年。当時の私の状況は、当サイトの別のところで紹介しているので、ここでは割愛するが、全て結果が出たことを踏まえて、ここでは検証してみたいと思う。当時大きな疑問があったのが、何で「合併」なのか?と、何で「この日(時期)」に発表するのかである。

後に、ライブドアが名乗りを挙げたが、当時の近鉄側の発表としては「このご時世であり、いい返事がなかった」とのことである。ある意味、これは真実であろう。近鉄という会社、野球界ではショボいかも知れないが、関西では歴史のある巨大企業群であり、電車の運転手や百貨店の店員等でも、それなりに学校で優秀でないと簡単に就職できないし、ましてや管理統括する大卒ホワイトカラーは、限られた者でないと就職など覚束ないくらい、敷居が高い会社なのである。となると、経営陣などはそれこそエリート中のエリートであり、プライドは異常なほど高いのである。それこそ、国家公務員官僚並みであり、こういう人種は自然に人間を序列化させる。端的に言えば、近鉄経営陣と話ができるのは、大阪行政関係者と、民間で言えば松下電器・関西電力・大阪ガス・日本生命クラスの経営陣が「同列」であるとし、阪神電鉄などは一段も二段も低い企業であると心得、現にこの手の企業には、バファローズの買収を持ちかけている。で、このクラスの人間は、自分たちですら持ち切れないバファローズを、松下電器クラスでも持てなければ、他は到底無理だろうと判断する。そんなこんなで、既に2005年以降はバファローズを持たない方針を決めて、タフィー・ローズとの複数年契約は頑として結ばなかったが、第一に身売りを考えていたのは事実ではあるが、他が持てないであろうという「勝手な判断」があったのは事実である。

で、身売りが出来ないので、命名権売却という案を出してみたが、あえなく頓挫。しかし、この時点で山口昌紀近畿日本鉄道社長は、比較的冷静にことの推移を見つめ「何故、ナベツネの野郎は、あないに興奮するねん?」と疑問を抱く。で、色々調べてみれば、パリーグの数球団には、観客が少ないので巨人頼りに「1リーグ化」を進める動きがあることと、野球協約上「経営が立ち行かなくなった場合、球団をリーグに返上できる」旨の記載があることに着目。ならば、その流れに乗れば良いし、上手く行かなければパリーグに返還してしまえば良い。とまあ、サラリーマンから伸し上がった経営者とは、かくも顧客や従業員のことは考えず、まず自分のことはともかく、会社の利益やプライドを重視するものである。近鉄そのものが、赤字転落し株主配当が無配となったこと、更に2002年度決算で「法人税申告漏れ」もあったことが相当に堪えたと見える。ある意味、大企業の経営者はこれくらいでないと勤まらないとも思うが・・・

渡りに船とはこのことで、一方で球団経営に悩んでいる、オリックスブルーウェーブの宮内オーナーから、話し合いを持ち込まれた。近鉄にしてみれば、オリックスなど企業の格としては足元にも及ばないと、近鉄側は考えているであろうが、まあそこは野球では同業者。断る理由もなく会談に応じ、宮内オーナーから「お互い関西で厳しい環境の中、どうして行けば良いか考えませんか」との申し出に対し「すいませんが、近鉄としては来年以降野球は撤退しますんで・・」と、そして宮内氏から「だったら一緒にやりませんか?」と持ちかけられ、近鉄は簡単に応じてしまった。オリックスは、近鉄と違って親会社は黒字で余裕もあり、野球事業にも意欲がある。しかし、人気・実力を得るために「1リーグ」を大いに望む状況にあった。ここ数年、最下位に喘ぎ、かつての神戸のファンも離れている状況から、少なくとも近鉄の選手を入れることで実力アップも見込め、阪神ほどではないがファンも増えるという一石二鳥を期待し、少なくともファンに対し「良いことをしている」と思ったであろう。

一方近鉄は、球団を持たずに済むなら、こんな金貸し野郎でも何でもいいから、ブン投げちまえってんで、あとはよろしくという心境であったと思う。要は、双方の思惑が一致したのであり、合併の大枠である、大阪ドームを使用するとか、近鉄が3年間10億負担するとかが、この時点でトントン拍子で進んだ。合併は、オリックスとしては、自分のところの戦力とファンの増強に繋がるし、球団が減少することで1リーグ化へ向け、何が何でも進めたい。近鉄にしてみれば、合併だろうが1リーグだろうがどうでも良くて、そのながれに乗れば、ナベツネの野郎もおとなしくしているから、面倒ではないという程度の認識である。近鉄にしてみれば、ライブドアなどが「買収」に手を挙げたが、自分のところの都合はどうでも良いが、既に周囲が1リーグに向かっているので、ここでオリックスに断りを入れると、またナベツネやらが騒ぐので面倒なだけだったのである。

そして、6月13日という日に発表したのは、やはり近鉄にはアイデンティティはない。効率的に、1リーグ化を進めるにあたっては、球団数を早目に減らして事実として作り上げる必要があると、宮内なり西武の堤が考え、そのターゲットがまず悲鳴を上げた近鉄と、親会社がもうどうしようもないダイエーであった。この時点での、各球団の1リーグへの思惑は、後の動きを見れば、こんな感じであろう。

近鉄  自分たちが抜ければどうでも良いし、面倒なのは嫌だ。
オリックス  合併してでも何でも1リーグ。
西武  自分たちは単独で1リーグ。
ダイエー  合併は嫌だが1リーグは考える余地あり。
日本ハム  合併は嫌だが1リーグは考える余地あり。
ロッテ  合併も考慮しできれば野球は辞めたい。
ヤクルト  1リーグ反対。
横浜  1リーグは反対だが交流戦ならよし。
中日  1リーグ反対。
広島  12球団2リーグで近鉄の合併も反対。
阪神  いつまでも巨人と一緒にやりたい。
巨人  自分たちが中心だから何でもOKだよ〜ん。


大きな、球界の再編となるので、球場やチケットの手配もあるのでできるだけ早めに決着をつけたい。大きな目標として、7月7日のオーナー会議にて承認されるよう、6月21日の実行委員会までに、その大枠を定めたい。そのためにも、ダイエーに早く諦めさせるよう、近鉄が発表することで、ダイエーにも諦めさせようという思惑で、この時期の発表であったと思う。ただ、6月13日という日が特定されたのは、この日を境に、近鉄が暫くロードに出ることと、14:00の発表は試合開始後であるため、抗議行動などの混乱を避けたかったと思われる。野球ファンの行動であるから、試合中なら試合を見ているであろうから、こっそりやっちまえ!ってんで、このときを選んだのであろう。全く、姑息な手口であるが、残念ながら現場はそれなりに混乱したし、この行動が更に怒りに転嫁するのであった。

とまあ、当時を振り返ってみたが、やはり近鉄側の不手際が良く目立つし、野球に限らず妙なプライドが邪魔している。確かに、大阪ドームという無用の長物が、大きな足かせになったのは事実で、2004年シーズン開始前に再建計画として、近鉄から年間12億の使用料を戴く予定と発表されたもんだから、近鉄としてもたまったものではない。それでも、大阪ドームの経営には、近鉄としても一端を担っているので、これを放棄したら、それこそ裏切り者扱いされるので、近鉄としては「ダメなんだ、ダメなんだ、野球なんてできないんだ、赤字なんだ、苦しいんだ!」と、声高に言うしかなかったのであろう。ま、しかし、彼らが思っている以上に、バファローズという存在は、関西圏のみならず意外に全国に、その存在意義があったのである。山口昌紀社長より中村紀洋の方が、全国に何倍も名が知れているし、「近鉄」と言えば「野球」なのだ。

現代、例えばフルキャストスタジアム宮城で、野球好きなオッサンたちに「楽天」ってどんな会社と訊ねれば、概ねこんな感じで返答されるであろう。「あぁ、何か良く知らないけどぉ、パソコンで何かやるみたいなぁ。会員になればぁ、いいことがいっぺぇあるみてぇでよぉ、ウチは子供らにぃ、みんなやって貰ってんだべさ」。それでもである、おらが街のイーグルスのために、楽天に何か協力してるという、一種の満足感が得られるというものである。「野球ファン」とは、そういうものである。近鉄に対しこちらとしては、長年応援してきて感謝してはいるが、球団を持てなくなって、ファンの皆さんすいませんと、一言あればまだ救いはあった。しかし、それとは裏腹に「いつまでも赤字を垂れ流していられるかいな!」と偉そうに言われちゃ、白けることこの上ない。オリックスバファローズも、宮内オーナーによる「合併の効果はない」などと言われれば、要は今までのファンは関係ないやね、となって、要は「俺には関係ない」となる。せめて「この統合を足掛かりに、更にチームを強化して行きたい」くらい言えないのが残念である。そうなると「世界一だ!」と公言する孫さんのホークスや、「勝てば劇的、負け方も壮絶で、ベンチャー野球だなぁ!」と言葉のニュアンスを変える三木谷さんのイーグルスの方が、将来的に夢があると思えてしまう。ついでに言えば、1リーグ化の旗振り役の西武ライオンズ。正直堤の野郎は「ザマー見ろ!」であるが、既に有力な買い手もいるようだし、ライオンズファンのために間違った判断はしないように・・・

また、最近良く聞くのが「楽天あんなに弱いと東北の人も見放すよ」という話であるが、残念ながらこれは的を得ていない。関東や関西のように、複数の球団があれば、どこか別のところにも行けようが、球団が1つしかない地域の方々の考え方は違う。例えいままで巨人が好きでも、自分の地域に居てくれる唯一の球団に、誇り高き愛情が芽生えるものである。福岡がその代表で、名古屋・広島はもとより、札幌もその意識が十分であり、仙台だって同じである。「これから東北の野球っ子が入って、強くしたい!」と考える方が健全であり、多数派。弱いからファン辞めた!などの贅沢な考え方は、やはり巨人や阪神ファンに多く、強ければ必要以上に大威張りして、負けると発狂する奴などは、球団としても望まないファンであろう。強くても弱くても、長きに亘り応援し続けてくれるファンを望んでいるはずだ。その点で、近鉄には梯子を外された気分である。