2005プロ野球かくあるべし!

3.野球にプロもアマもない

世界中のスポーツを見ても、日本の野球界ほど、プロフェッショナルとアマチュアがくっきりと区別され、全く交流のない世界はない。はっきり言って「バカげている」としか言いようがなく、どの世界でも、プロとアマが共存し、特にアマチュアがプロに施しを受け、レベルアップを図るのは当然である。我が国でも、サッカーは天皇杯を通して、Jリーグチームと高校サッカー部が、公式試合を行うこともあるし、ゴルフやテニスもオープン大会が開催されている。日本の伝統の権化みたいな相撲界だって、大学の相撲部が大相撲の部屋に稽古をつけてもらったりするには、日常茶飯事である。確かに野球界も一昔前に比べれば、かなり進歩しているが、それにしたってソフトランディングよろしく、モタモタしているのには変りがない。大体からして「プロだ」「アマだ」と言うこと自体、馬鹿げている。野球は野球であり、互いに協力し合うことができないのは、どう見ても変である。

現状を見れば、大学野球は頻繁に交流を行っているし、社会人野球に至っては、元プロ選手がチームに参加することもあるので、十分な体制となった。問題は、教育の権化のような「高校野球」である。そして、この高校野球が、アマチュア野球で最も人気があるから始末に悪く、私は高校野球の方に問題があると見ている。

まず、プロ経験者が高校野球の指導者になるには、その学校の教職となり、2年経過後初めて指導ができるとなる。高校野球の監督は全て教員ではなく、様々な職業の方がいるし、はっきりと公言しないが、強豪私学には「雇われ監督」もいる。大阪のPL学園の場合、監督の職業は「教団職員」などと、訳の解らない職があったりする。教員になるためには、大学を卒業して所定の試験に合格しないとなれないから、どうしても高校卒プロ選手には厳しい。いや、大学卒選手でも、大多数は在学中に「教職課程」を履修したとは思えない。よって、引退後高校野球の指導者になりたくても、殆ど門戸が閉ざされた状態であり、これは日本の野球界にとっては、大きな損失である。

高校野球の指導者のうち、本当にアマチュア野球のトップレベルでプレイした経験がある指導者は、全体の1割にも満たないであろう。その他は、大学で「体育」を習った程度や、野球はやったことがあっても、下手糞だった者が大多数である。こういう指導者は、確かに人間教育的な側面は担えると思うが、技術指導については全く論外である。2000年夏、佐賀代表に中学時代九州大会を制した大型投手が、無名の県立高校を率いて甲子園にやってきたが、予選終了後肘を傷めて、とても投げられる状態ではなかった。甲子園で投げている姿を見て、確かに有望な投手であることは誰が見ても解る素材であったが、肘は大丈夫なのか?そして、試合は敗戦したが完投。後で聞けば、無名高校だけあって、監督は素人同然で、その投手の将来を考えれば、甲子園で投げさせてはいけないのは理解しつつも、本人が折角の晴れ舞台であるから「是非投げたい!」「腕が壊れてもいいから!」と言う申し出があったとのこと。この監督にしてみれば、この投手がいたからこその甲子園であり、情に絆され投げさせてしまった。全く馬鹿げた話である。少しでも野球を経験していれば、こんな見当違いな判断はしない。高校生が、折角掴んだ甲子園の舞台に立ちたいのは当たり前で、肘や肩が壊れようが、40度の熱があろうが、ここで野球人生が終わろうが関係ないと思うものである。そのうえで、我慢させ将来を見据えて鬼になるのが、指導者である。この投手、社会人に進んだが、肘は全く治らず、野球人生が終わってしまったのだ。全国大会に出場するような高校でも、この程度の指導者しかいないのであるから、高校野球の人材不足は深刻な問題である。

それならば、全国にごまんといる「プロ野球OB」が、高校野球の指導者になれば良いのである。実は、高校野球レベルが、プロの指導者には丁度良いと思う。大学・社会人では、体が成長し切っているので、各選手の方向性は決まっているし、小・中学生ではプロのレベルは理解が難しい。よって、体も成長し方向性が定まる時期の高校生に、プロが指導することが相応しいのだが、数あるアマチュア野球の中で、最もプロとの接点を持ちたがらないのも高校野球なのだ。同時に、高校野球はアマチュア野球の中で、桁違いの人気がある。それは、夏真っ盛りの炎天下で連日試合を行い、エースなどは決勝に進めば4連投などを行う。そうして、ガンガンにクーラーを浴びて見ている、お茶の間の人気を得ているのだ。お茶の間が感動すれば、有望な高校生が潰れても良いのか。甲子園ともなれば、毎日NHKで中継されるし、関東では各県のU局で、メイン球場の試合を一日中放送しているそうだ。もっとも、このあたりの議論は、私が中・高校生時代から言われ続け、全く改善されないのであるから、高野連には改善する気がないとしか、私には見えない。高校サッカーが、連日の試合を止め、隔日や中2日置いて試合を行うようになったのに比べ、かくも高校野球は馬鹿げている。

実際、高校球児はプロ野球には興味を持っている。夏の甲子園の時期には、大阪ドームに公式戦を観に来ていたり、日向キャンプにも、地元九州の強豪校が見学に来ている。その眼差しは、我々ファンとは違い真剣そのもので、少しでも自分のプレイや練習に参考にならないか探しているのである。高校生は、素人くさい指導者からの精神論や教育論に、辟易しているのだ。いや、それが全て悪いとは言わないが、やはり高い技術を習得したいし、高校生ぐらいになれば、習得するには丁度良い。プロ野球OBも、指導をしたいのであるから、どうかその道を拓いて欲しいものである。そのためには、大学で4年+教壇に立って2年などと眠たいことを言わず、1〜3ヶ月程度の期間で、指導要領・栄養学・心理学等を習得できる「指導者教育」研修で可能となる制度を求めたい。そうすれば、高校球児のプロ野球への見方も変わってくるし、高校野球人気が低下することもなく、良い方向に向かうと思う。

連日開催される、高校野球のトーナメントはどうするか。まず各地区の予選は、6月の頭から毎週末行い、7月の夏休みに入った時点では、ベスト8が残っている程度で良い。これでは、予選の番狂わせができ難く、つまらないという意見も出そうだが、例えば大阪でも200校あるうちで、甲子園の出場の可能性があるのは10校程度である。変な番狂わせよりも、実力校が甲子園で集う方が、面白いと思う。そして甲子園は、最近盛んになってきた「女子」の大会も、平行して行うのが良い。女子高校球児だって、男子同様「甲子園」でプレイしたいであろうから、男女交互に試合を行えば、決勝まで行っても確実に中1日置ける。したがって、8月は丸々1ヶ月かけて、甲子園は高校野球真っ盛りとなり、女子の大会も、結構人気が出ると思う。同時に、女子の指導者にも、元プロがいても全く問題ないし、歓迎すべきことであろう。

あっ、一つ問題があったか・・・1ヶ月以上も「死のロード」を行う、プロ球団ができるんだけど・・・う〜ん、元々甲子園は、高校野球ののために建てられた球場ですし、女子だって立派な高校野球です。まあ、大阪もフランチャイズになったことだし、大阪ドームでも使ったら良いのでは?儲かって、大阪ドームも喜ぶし、涼しくていいでしょ。