野球の話(バファローズの話)

お正月のバファローズ

シーズンオフでも、野球どころではなく、ちょっと忙しかったりするのが年末年始。それでも、野球ファンなら片時も忘れたくないもので、近鉄バファローズも同様。正月には、各テレビ番組も多様化し、プロ野球選手もクイズやイベントのような番組に登場したりするが、決まって人気チームが中心。それでも、12球団対抗の形式の場合、どうしても応援してしまうのは当然ですよね。

さてさて、近鉄バファローズの場合、系列企業の「近鉄百貨店」の主催で、毎年お正月には「新春トークショー」が行われていました。もちろん、百貨店さんの立場からすれば、福袋を中心とした「売上」アップのために、まずは人を集めることで拡販を目的にしているのですが、年末は忙しくても案外正月は暇だったりするもので、私も毎年必ずどこかに顔を出していました。本当に、楽しいイベントでした。

近鉄百貨店の場合、阿倍野(天王寺)と上六(上本町)が有名で、正月中2〜3回くらい行っていましたが、その他では東大阪(布施駅)・橿原(大和八木)・京都・奈良・和歌山・四日市各店は頻繁に行っていて、枚方・生駒あたりは、スペースの関係か、あまり実施されていなかったと思います。中には、午前中東大阪で出演し、午後は阿倍野で出演する選手もいたりしてましたね。その昔は近鉄百貨店も、東京吉祥寺や岐阜・別府などにも店があり、そこで実施していたかは判りませんが、恐らく佐野正幸さんが居られた吉祥寺などは、やっていたかもしれません。

時間にして概ね1時間程ですが、2・3人の選手が登場し、司会進行はテレビ局の女子アナウンサーであったり、司会業を行うフリーのアナウンサーであったり。中でも、石川展子(のぶこ)さんという、ベテランのフリーアナウンサーの方は、かなり前から行っていて、あのABC放送のアベロクさん同様、近鉄ファンなんですよね。よって、トンチンカンな質問はなく、実に的を得ていてました。実際に、シーズン中には普通に観戦に来られていて、大阪ドームなどでも石川さんを見かける機会も多く、余り全国には知られていない「近鉄な方」です。特に印象的なのは、大村直之選手との「掛け合い」で、最初は大人しくしている大村選手にチクチクとツッコミを入れて、徐々に彼の特徴である「歯に衣を着せぬ」発言を引き出すテクニックは絶品でした。主に武藤孝司選手と一緒の時が多かったのですが「善の武藤と悪の大村」という感じで、石川さんが「今日はお二人ともスーツでビシッと決めてますが、どちらでお買いになったのですか?」と聞けば、武藤選手は「あ、一応近鉄百貨店で…」と応えると、聞いてもいないのに大村選手が「ボクは、近鉄百貨店では買い物しないんですよ!」と、周囲をヒヤヒヤさせる発言で応戦。また「お二人は俊足コンビですが、若手の森谷選手も人気があって、早くレギュラーになって欲しいという声も良く聞きますが大村さん?」「大村さんと言えば、春先は調子が良くて、後半から成績がいつも落ちますが…?」などと、わざわざカチンと来るような、石川さん一流のツッコミもありました。ま、いじりたくなるんでしょうけどね。話の内容は、時節柄昨年の出来事についての話が多く、ちょっと笑える話も含め、最後は当然「今年の抱負」ということで、選手に色紙に書いて貰って、その色紙をちょっとしたゲームをして視聴客にプレゼントされるというものでした。

その昔は、その場でサイン会なども行われましたが、大変な混雑となってしまいますので、予め抽選を行ったり、近年では「バファローズ福袋」を購入した方のみに行うなどしていました。因みにこの福袋ですが、値段は3000円〜5000円で、中身は1万円相当とかですが、要は売れ残りグッズです。ある年、私も上六と阿倍野で購入しましたが、ま、サインを貰うだけなので、何となくアホらしくなって、専ら視聴するだけに専念して、帰りについでに正月用の食べ物などを買って帰るという、まさに近鉄百貨店の思惑通りの行動をしていました。それでも、このバファローズ福袋は、さすがに徹夜で並ぶなどはないようでしたが、あっという間に完売になるようで、近鉄百貨店も工夫?して、余り宣伝しなかったりしていました。例えば、1月1日の新聞などで「明日は近鉄の初売り!」の広告があるのですが、その中に微妙に小さく載せたり、載せても「6Fワゴンセールにて」程度にしているのです。もちろん、公式HPには一切載せていませんでした。で、いざ開店と同時に6Fに行ってみると、それらしき物はない。で、店員に聞いても「ちょっと判らない」の返答で、ちょっとお客の数が減ったところで、急に拡声器を持った方が「只今から、バファローズ福袋を販売します!」のアナウンスがあったりします。これは、ある意味商売としては「アコギ」かも知れませんが、仕方ないかなという気もします。数量限定の人気商品ですし、殺到するのは間違いなく、他のお客さんに迷惑になりますしね。だから、勝手知ったる者はそのへんをウロウロして、ショップバフィの店員さんあたりが登場すると、それとなく付いて行くなどしていましたね。今となっては時効ですから言いますけど、私もショップの方にこのカラクリは聞いていましたけど、これってやっぱり「属人化」ですよね。まあ当然、苦情は絶えなかったようでしたけど、ここらは百貨店の方々は本当に苦労されたと思います。また15万円とかの高額福袋もあって、選手使用品や日向キャンプへのご招待などの特典があり、結構人気があったようです。

これは、阿倍野や上六の話であって、どうしても本店や老舗店は、鈴木啓示・梨田昌孝・大石大二郎・阿波野秀幸・石井浩郎・野茂英雄・赤堀元之・中村紀洋・岩隈久志といったスター選手の登場が多かったので、視聴客も多く仕方なかったと思います。しかし他店では、バファローズ福袋はなくても「先着何名様」というようにしていました。また、その店ごとに工夫があって、京都ではゲームがあったり、橿原ではオークションがあったり。特に印象深いのは和歌山で、必ず和歌山出身選手が登場し、昔は吉井理人で近年は前田忠節が定番。そして、イベントとしては大盤振る舞いで、全員に何か当選するようなこともありました。

また、トークショーだけではなく、近年球場で配布された「バブルヘッド人形」も、初売りのとき3000円以上買った方にプレゼントなどもありました。しかし、野球を全く知らないオバはんなどは「何やこれ?こんなんいらん!」と言い切るので、後ろに並んでいて「ほな、替わりにちょうだい!」と言うと、店員さんもしっかりしてて「そういうわけには…」だとか。

また、近鉄百貨店以外では、特に「大阪近鉄」と名乗るようになってからは、大阪府内の正月イベントに選手がゲストとして迎えられる機会が多くなりました。商売繁盛の今宮戎神社の「宝恵駕篭(ほうえかご)行列」に、梨田監督や若手選手が登場し、「ほ〜えか〜ご、ほ〜えか〜ご」という掛け声の元で、選手が御輿に乗ったり。また大阪天満宮など、初詣で賑わう神社の境内に登場したり。それと、ABCが放送していた「バファローズアワー」の正月向け番組の生中継を、近鉄百貨店で行い、一般客も入れたりしましたね。

今こうして球団がなくなって、他球団の正月関係のイベントを見回してみても、これほどまでのイベントを主催している球団はないですね。例えば、同じ関西地区でも阪神タイガースは、確かに百貨店で「タイガーズ福袋」などもあり、即売されるようですがそれで終了。近鉄百貨店の場合、関西に店が多くありますので、その分イベントの数が多い。しかも、当然ノーギャラということはないでしょうから、それなりに負担もあり、上記のようにお客様対応も大変だったと思います。もちろん、そこには「野球ファンのため」と言うより、売上アップが目的だったのは間違いありませんが、結果として野球ファンも楽しめたので、有難かったですね。球団が消滅した今でも、梨田元監督はトークショーを行っていますが、微かに球団があったことの証しを残してくれているようで、嬉しかったりします。2003年の阪神優勝で、関西では便乗するような形で「優勝セール」などを行うところも多かったのですが、近鉄百貨店は行わなわなかった。それは昨年も同様で、そのあたりの良いプライドを持った百貨店として、今も感謝しています。