野球の話(バファローズの話)
吉岡と礒部に見るプロとは何か?
2005年は、東北楽天ゴールデンイーグルスの試合を中心に観てきたが、ある意味、自分の中でのバファローズを堪能してきた場でもあった。例えば、近鉄出身選手が多いと言っても、そこは実績のある選手の多くは、オリックスに取られてしまっている。その中で、実績組としては、野手では吉岡雄二と礒部公一が双璧。川口憲史や藤井彰人は、やや不足している。で、この吉岡と礒部だが、所謂「仲が良い」という風情は全く見えない。それどころか、むしろ仲が悪いのではないかと、逆に疑ってしまうほど、互いの存在を無視しているかのように見える。
この二人、奇しくも近鉄に入団したのは同じ1997年で、大阪ドームが開場した年だった。よって、二人とも所謂赤袖ユニは着ていない。吉岡は、甲子園の優勝投手から巨人に入団したが、なかなか出場機会に恵まれず、丁度当時の主砲石井浩郎が契約で揉め、巨人へトレードされたときの見返りで近鉄に来た。礒部は、ドラフト3位での入団であったが、その年の注目は地元PL出身のドラフト1位の前川と、逆指名の大塚だった。よって、当初の印象は薄い。この頃は、ローズ・クラークの両外国人のパワーが炸裂し、ベテラン鈴木貴久の力も徐々に衰えて行ったが、中村紀洋が中軸に座るようになってきた頃で、吉岡も礒部も時々試合に使われる程度であった。ポジションも、吉岡は本来のファースト以外にも、外野をやったりしていたし、礒部は捕手が本職ではあったが、外野もやるなど、その適正を見極められていると言うより、どんな形でも試合に・・という印象だった。クラークが抜けて、ようやく吉岡がファーストのレギュラーを確保した感じであったし、礒部は2001年当初は捕手としてキャンプまで過ごしているが、窮余の策で、開幕直前に外野に固定され、以後捕手は行っていない。
中村とローズが3・4番を打つとして、クリンアップのもう一角には、新外国人のガルシア。しかし、開幕戦こそホームランを打ったガルシアは、日本の野球に馴染めず、吉岡と礒部にクリンアップの期待を寄せざるを得ない状況になった。で、2001年の序盤戦に、相手の先発投手が左腕なら吉岡、右投手なら礒部が5番を打つようになったが、2人とも持ち味を発揮し、優勝に大きく貢献した。通っぽく評論したいファンは、ローズ&ノリもいいが、礒部・吉岡のコンビも!と。礒部は、広角に打ち分ける起用さがあり、吉岡はツボに入れば大きな一発がある。そしてこの二人、この年はチャンスに異常に強かった。しかし、振り返ればまだこの年は、二人ともレギュラーを確約された立場ではなかった。この優勝で、ある程度の地位を固めた感じはあるが、以後はやや低迷する。
元々の性格もあるだろうが、礒部は同期生には中村をはじめ数多くいる環境も手伝ってか、チームメイトとコミュニケーションを頻繁に取り、比較的一匹狼的な大村とも仲良く接していた。一方の吉岡は、練習などでは良く声が出るが、それほど明るく振舞うタイプではなく、同期生の大塚以外とは普通に接していた印象である。そして、球団が消滅したが、大事なのは今のメンバーでやりたい、というのは近鉄ファンへのリップサービスであり、如何に自分にチャンスがあるかという球団を選ぶかということ。近鉄の選手は、概ね楽天を希望していたが、特に礒部と吉岡はその思いが強く、これは別段申し合わせていたことではない。後に、岩隈の熱望ぶりも発覚するが、彼の場合はもう少しニュアンスが違う。
新球団立ち上げ時、春季キャンプから礒部は前年のこともあって、近鉄時代以上に大注目のシーズンとなった。一方吉岡は、前年は怪我で棒に振っていたので、ひっそりと再起を期している。キャンプでもオープン戦でも、この二人が交わることはないのは、近鉄時代から同様。すれ違っても、ロクに話もしない状態から、素人目には「仲が悪い」と見えるかも知れない。私自身は、まあ、プロ野球の世界だからそれもありで、過去にもそんなパターンは何度も見ている。しかし、様々なインタビュー記事を見ても、吉岡から「礒部」という言葉は見えないし、逆もまた同様。せっかく新球団になって、古巣を知る同士にしては、ちょっぴり切なくもあった。
しかし、そんなことは杞憂であった。開幕して、連日試合があっても珍しいくらいに言葉を交さない二人ではあったが、6月の交流戦で、吉岡がサヨナラヒットを放つと、真っ先に吉岡に飛び込んで行った礒部の姿があった。そして、フルキャストスタジアム宮城で、1塁側の選手に近い位置で座っていたとき、インターバルの間にさりげなくライトの礒部に守備位置の指示をする吉岡と、合図する礒部の姿があった。要は、この二人はもう何年も一緒にやって来ているのであって、今更必要以上に仲良くすることもなく、試合になればチームの勝利のため一丸になれるのである。お互いに、気になる存在であるし、実力は認め合う存在。礒部は、吉岡の復活が嬉しかったのであろう。それは「吉岡さんが居ないとチーム成り立たない」ということ。新規参入で、選手も寄せ集め。従って、他球団よりも多くコミュニケーションを取らないといけない状況で、吉岡と礒部は、互いの役割を果たして来たように思う。ベテランを立て、若手を叱咤する。吉岡は内野手として、投手やバッテリーに檄を飛ばし、内野の守備を引っ張る。礒部は外野守備の中心でもあり、攻撃では先頭打者としてチームに喝を入れる。矢面に立つ礒部を、吉岡がさりげなくフォローする姿が印象的であった。しかし、これは近鉄バファローズでは当たり前であった。
楽天イーグルスは、来季は2年目である。1年目は、コミュニケーション不足などの纏り面で、大目に見てきたが、2年目はそうは行かない。大村直之の行ったソフトバンクなどは、試合前に選手がジャレ合ったりなどはしないが、試合になれば一纏りになる。つまりは、個々の選手の役割が徹底され、お互いに確認し合うとかの必要がないレベルなのだ。真の強さとは、このことではなかろうか。選手間で、仲が良いとか悪いとかは関係なく、試合になればそれぞれの選手が役割を果たして行き、それが出来ない選手は去って行くのが、本当のプロフェッショナルであると思う。例えば、高須などは自分の役割を理解していないで、自己アピールに終始するようではまだまだだし、他の選手に迷惑になる。
今年の楽天、近鉄出身の選手が数多く出場したが、近鉄時代にレギュラー級だった選手が意外に少なく、どうにも苦虫をかみ殺した場面が多かった。「お前は、何のために今打席にいるんだよ」「お前は、何しにマウンドに上がったんだよ」「そもそも、お前何のために野球やってんだ?」という、初歩的なことから問い出したい気分に何度も駆られたが、それもこの1年は経験を積むということで整理できれば良い。
レギュラーは、与えられるものではなく「強奪」するもの。そして、一度掴んだら、追随して来る者を蹴落とすものである。高須が、その地位を「楽天生抜き」の西谷に奪われそうになったら、西谷の失敗を非難してやれば良い。川口が、やはり「楽天生抜き」の平石に奪われそうになったら、平石のミスを詰れば良い。そして、それを球団フロントが咎めようものなら、こんな球団はいつまで経っても強くならない。プロ野球選手は、その能力や結果に於いて、報酬が決まってくるわけで、仮にチームが優勝しても全く活躍できなかった選手の年俸がアップするのはやはりおかしい。よって、選手間は競争であるし、他人の失敗はイコールライバルのチャンスである。試合中などでは互いに協力し合っても、日頃も必要以上に仲良くするのは変であるし、それはサラリーマン社会でも同じではなかろうか。その意味では、大変毒っ気の強い野村克也監督就任は、個人的には大歓迎ではある。
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そういう野球をやろうぜ、楽天イーグルスさん!