野球の話(バファローズの話)
仮にライブドアへの身売りが叶ったら?
いつだったか、勤務会社の部下の女の子に相談されたことがある。主旨は、帰宅中や在宅中に、ストーカーから嫌がらせを受けていると言い、その防御策や対応策についてであった。一通り、状況を聞けば、世の中暇な奴もいるものだと呆れてしまった。で、この女の子、色んな意味で目立ち、すれ違えば世の男性は振り返るようなタイプで、時は夏であり露出の高い服装であったので「キミもあれや、そんなん着とるから、狙われるちゅうこともあるねんぞ」とアドバイスのようなものをしてみた。まあ、言うならば基本的な防御策であるが、この女の子は「何でですか?」と切り返してきた。「服装は、個人の主張やないですかぁ。そんなんで嫌がらせする方が、アカンと思いま〜す!」と。いやいや、その通りで仮に裸で歩いているからって、襲ったなどはクソの理由にもならない。そうではなく、嫌がらせされないための対策なのだが「相手がいる」ということが、理解できないようだ。
と、こんな話を踏まえて、ライブドアの話。あの、忌わしい合併発表があった約2週間後に、ライブドアの堀江貴文社長が「近鉄球団を買収します」という記者会見を開き、近鉄ファンはもちろん、野球ファンの全てがこれに注目した。恐らく、殆どの方が、会見内容よりあの出で立ちに目が行ったと思うが、この日以降今日に至るまで、日本中がその動きに注目することになる。余談だが、私はライブドアという会社は知っていた。と、言うより「株主」だった(今は違う)。何気に、ベンチャーキャピタルに興味を持っているので、注目企業ではあったが、このときは冷静に近鉄を買収する是非を分析していたが、その時点での結論は「否」。理由は後で書くが、今もその当時の判断は間違いなかったと思う。しかしながら、あの合併騒動の最中では「合併するよりはいいか」というのは、紛れもない事実で。堀江社長が大阪ドームに来たとき、試合終了後選手がライトスタンドに挨拶に来た姿を見て、選手が望んでいるならそれもありかな?とも思った。
ここで、幾つかの発言を振り返りたい。まず最初の記者会見で、堀江社長は「売名行為ではない」「ITベンチャーの経営ノウハウを活かしたい」「プロ野球という業界に風穴を開けたい」ふむふむ、なるほど意気込みとしてはOKだが、それで・・・という感じだった。要は、具体性がなくバファローズを買収して何をしたいのか?である。その後、これらは近鉄側に提示されたそうだが、公開されなかった。そこで、ライブドアのポータルサイトからその一端を紹介されたので見てみたが、内容は確かにライブドアの経営ノウハウは記載されていたが、野球にどう活かすかが皆目見当つかず。強いて言えば「こんなアイディアもあります」レベルだった。大阪ドームに来たときは「ナベツネさんも宮内さんも球場に来ればいいんですよ!」だが、バカ言っちゃいけない。ナベツネは酔っ払い客レベルだが、ほぼ毎試合東京ドームに顔を出すし、宮内に至っては、本拠地どころかビジター試合にも積極的に行くほどの野球好きである。「買収後も大阪ドームを本拠地にします」だが、関西のマスコミ事情を考えれば、果たして阪神以外の球団が、如何に関西で生き残るのが厳しいかはちょっと調べれば判るので、安易に言うものではない。もう少し野球界のこと勉強して来いよが、率直な感想だった。
しかし、世論は違った。概ねライブドアに追い風であり、ナベツネ・宮内に対して「老害」というレッテルが貼られた。確かにナベツネの「ボクの知らない人が入るわけには行かない」という発言は、全国紙の社主の発言としては、非常に芳しくない。まあしかし、深読みすれば「もっと、文化事業や社会貢献で実績を挙げてから来い」ということであろうが、それであれば私はナベツネに賛成する。企業として、文化事業や社会貢献への投資は、見返りを期待するものではない。しかし、それ自体は利益がなくても「富める者が社会的使命として、社会的意義のある貢献をして行く」という、「名声」や「社会的評価」を得れば、その企業の投資家に対して説明がつく。プロ野球を、社会貢献的投資と置き換えれば、その額は他の文化事業と比較しても多大である。要は、ライブドアは本業の利益で何か社会的貢献を行ってきたか?ということを問いたく、ナベツネの言葉を借りれば「カネがありゃいいってもんじゃない」は、ここに繋がる。したがって、私にはライブドアが球団を持つということの哲学が全く見えないのだ。また「売名行為」について、ライブドアは全面否定したが、こんなのは世論対策に他ならない。利益の上がっている企業が、税法対策や宣伝(要は売名)に、球団経営の赤字を広告費で処理するという行為は、全くもって安定した企業の真っ当な経営モデルであり、近鉄が球団を持つメリットがないというのは、まさにこれ。球団自体の赤字が大きいことが問題なのではなく、近畿日本鉄道という親会社の体力が衰退しているためである。鉄道本社が、多大な利益を挙げていれば、その利益処分に球団に投資していると、株主に説明がつくが、御本体が赤字なのに球団を持つとは何事かと考えるのは、至極当然である。よって、近鉄が球団を手放すことには異論はないが、合併というオリックスに丸投げという安易な選択肢を選んだことと、この手の説明を全くせず感情的になる山口という社長のバカさ加減には呆れたのは、言うまでもない。
いやいや、プロ野球は社会貢献ではなく、球団自体が企業だからという声も聞こえそうだ。しかし、年俸を抑えたり、ファンの心理を掴んだり、選手を育成するシステムを強化することはできるが、球団が単体の事業会社となると、産業構造を変える必要もあり、更に言えば高校野球も含めた教育改革にも着手しなければならない。つまりは、プロ野球の価値観を大幅に入れ替える必要がある。ライブドアは、選手やファンを経営側の一方的な支配から脱却するための起爆剤であったことは否定しない。しかし、如何にも企業としての社会貢献の実績に乏しく、球団買収発表の直前に、中堅証券会社を買収して、急激に資産規模を強化したに過ぎない。いやいや、それでもある種天才型経営者堀江氏であるから、球団も上手く経営したかも知れないが、私は愛する近鉄バファローズを、一人の若き才能の試験台にされるのはゴメンだった。けど、合併消滅よりは良かったかな?と考えられなくもないが・・・
もう一つ言えば、今回新規参入になった「楽天」との比較だが、私もNPB同様に楽天の方が良かったと思う。仙台参入時に見せた、楽天三木谷社長と、堀江氏の対応を比較すると、ざっとこんな感じであろう・・・
三木谷氏 堀江氏 野球界について すごい事業だなと思っています。 ちゃんと審査すれば、どっちかを落とすなんて、変じゃないですか。 参入にあたり 野球界に入れて貰えるか判りませんが・・・ もっと発展的に、考えられないですかねぇ。 アダルトサイト 18歳以下は見ないよう、できるだけ警告する努力をします。 取締は不可能だし、場所を提供しているだけ。 単純な比較だが、どちらに軍配が上がるかは、一目瞭然。しかし、世間では楽天は後出しであり、巨人などに擦り寄っているなどの酷評を浴びている。しかし、これが経営者としての器量の違いであり、むしろ参入するためなら、嘘も方便でこれくらいの「したたかさ」を兼ね備えた三木谷氏の方が、経営者として信頼できると思うが、如何なものか。落選後、堀江氏は落胆とも愚痴とも言える会見を行ったが、まさにこれこそ「相手がいる」ということを理解していない、端的な例であろう。野球界は、業界全体で盛り上げて行く構造があり、業界内に無用に嫌われてはいけない。今のまま、ライブドアが仮に参入できたとしても、内部から徹底的に嫌がらせを受けるのは必至である。今後、ライブドアが野球界への参入を試みるのであれば、堀江氏の姿勢は大いに問われると思う。
最後に、ここまで書いて何だが、別段私は堀江氏に嫌悪感を持っているわけではない。もう少し上手にやれよと、言いたいだけである。もっとも、そんな堀江氏に同情する声が大きい我が国も、捨てたもんじゃないとも思う。