野球の話(バファローズの話)

バファローズ消滅の実感

プロ野球改革の年2005年がスタートして、まず最初に、長年近鉄バファローズがキャンプを行ってきた日向に、新球団である、東北楽天ゴールデンイーグルスのキャンプを見てきた。この主旨はいろいろあるが、ズバリ「自分探し」の旅であった。そして、「近鉄バファローズは消滅した」ということは、はっきりした。そして私自身、不思議なほど、スッキリしているのだ。

合併発表当初のことを思い出すと、私自身は近鉄側の記者会見を聞いて、不快指数無限大なほど怒りが沸騰点に達していた。しかし、合併反対運動がヒートアップするに連れ、私自身は少しづつ冷めて行ったのも事実であった。どうも、私は事態を冷静に受け止める構造が体の中にあるのか、例えば試合観戦中でも、死球や乱闘など、周囲が興奮する中で冷静でいられる。それと同じで、一方では反対運動を行っていたが、一方では球界上層部の動きを見て「あぁ、こりゃ生半可な決意じゃねーな」ということも理解した。これだけ、ファンの反応が激しくなっているのに、粛々と合併手続を進める、近鉄・オリックスの首脳。これは無神経でも、老害でも何でもなく、並々ならぬ決意で合併を進めているのであろうと、思わざるを得なかった。ファンなりが反対するのは先刻承知、それにより過激な動きが出てくるであろう。しかし、それでも合併は絶対にやるんだ!という、特に近鉄サイドの動きは、凄まじい迫力であった。よって、余程のことがない限り、合併は撤回されないであろうと思った。

それでも、やはり合併が撤回された方が良いし、選手たちもそのように動いている。ならば、それを支援してきたが、9月23日の会議で、礒部が涙を流した時点で、私も終わった。いろんなことが頭の中を巡り、その夜は寝られないほど、心でも泣いたし、実際泣いていた。楽しいこと、嫌な思いをしたこと、優勝して大喜びしたこと、諸々の理由でスタンドで喧嘩したこと。勝った勢いで、藤井寺から奈良まで車を飛ばし「燃えろ近鉄バファローズ」をガンガン鳴らして、酒気帯で捕まったこと。しかしこれも、みんな思い出であり、何もかも全力でやってきたことで、悔いなど全くないことに気づいた。この合併でも、途中からもしかしたら今年で最後になるかも知れない、だから最後まで悔いなく応援しようと心に決めた。一夜明け、何となく吹っ切れたものがあったので、最終戦は本当に楽しめたと思う。

私は、その性格もあるが、近鉄バファローズに対して、かなり「現実派」であったと思う。人によっては、夢の世界であり憧れのような「ファンタジー」の世界で捉えていたかも知れないが、少なくとも私にはその感覚はない。「寂しい」「切ない」など、私に言わせれば、ちっとは近鉄の立場も考えれば「さも、有りなん」である。例えば、藤井寺球場の閉鎖。私も壊して欲しくないが、すぐには壊したくても壊せないだろうなと、見てしまう。そもそも、野球の騒音ですら文句を言う周囲の住民が、取り壊しなど一時的とはいえ、連日喧しい状況に納得するであろうか?あそこの住民の意見は「壊しても構わないが、静かにやってくれ」といった具合の、絶対ムチャなことを言うに決まっている。となると、近鉄はどうするのか?放って置くのである。そして、そのうち鉄筋が崩れ、劣化したシートなどが飛び交い、それこそ民家に飛び込んで来るようになって、初めて住民から「えぇ加減に壊せ!」と言われて、初めて壊すのである。また、球団消滅直後、分配ドラフトでオリックス行きが決まった岩隈が難色を示し、大問題に発展する中、コメントを求められた近鉄経営陣は「我々には関係ない」と発言し、多くのファンを怒らせたが、これとて私はウソでも「今まで貢献してくれた選手です、良い方向に解決して欲しいと願っています」と言えない近鉄って、商売ヘタやねと思っただけである。と、いうのが「リアリスト」である私の見方である。

さて、キャンプも終わり、オープン戦が始まった。この期に及んで、未だ「実感が涌かない」「近鉄という文字がないのが寂しい」等、言う方も多いが、残念ながら私には実感バリバリで、次のことで頭がいっぱいである。何でそうなのか?だって現場で見てきてたんだもん!としか言いようがない。キャンプに行く前から、もう近鉄がないことは実感できていたが、行ってきたことでそれが確かめられた。もう、日向に近鉄はない、だから日向にはもう行きたくない。こんなホームページを開設して、相反するようだが、もう近鉄バファローズは過去の産物であって、嘆いていても仕方ないのである。少々無理してでも、次に向けて切り替えねばならないであろう。その存念は、つまらないがやはり「ビジネス」で割り切る必要があり、近鉄が球団を手放すのは勝手であり、更に言えばファンを無視するのも、残念ながら「経営判断」であるから勝手である。そして、それが大衆受けせずとも、企業の判断である。一方で、ファンも勝手であっても良くて、私自身も今までバファローズを持っていたから、近鉄関係に投資していたものもあったが、それは全て切り離した。そう、これも私の勝手である。仮に、近鉄百貨店の友の会を継続しなかった場合、必要以上にしつこく継続を依頼されるであろうか?そんなことはない、実際私も継続を拒否し、若干依頼されたが「いや、もうバファローズないんでね」と一言で「ありがとうございました」と、そんなものである。だから、今後近鉄という会社や、大阪ドームがどうなろうと、私の知ったことではなく、いつまでも、近鉄バファローズを偲んでばかりはいられない。オリックスと楽天、どっちがいいか?それは、楽天に決まっている。オリックスなんて、基本的に今までと変わりないし、監督は仰木さんだが、それこそ過去の思い出の人であって、半永久的に仰木さんが監督を続ける筈もない。楽天の方が、新しいプロ野球経営に着手しそうで、あくまでビジネスの面で面白そうだ。

更に言えば、近鉄のこの経営判断について、少なくとも私自身は、近鉄を非難できるほど、綺麗に人生を送っているとは言えない。やはり、様々な恩恵に被りながら、そして非人道的なことにも若干手を染めながら、人生を送っているのもまた事実である。もちろん、裏社会で生きているわけではないが、そんな神様のような人生を送っているわけではない。

ここまで書くと、貴方は近鉄バファローズを愛していなかったんだ!などと言われそうであるが、冗談じゃない。私は本拠地1000試合以上観戦し、本拠地以外も含めれば、1500近く観戦している。それも、色んなことを犠牲にしてである。そこまで入れ込んで来たから、逆に消滅も仕方ないのも判るし、もう十分楽しめたから悔いがないだけなのだ。近鉄の選手たちが、新天地で溌剌と動き回っている姿を見て、身代わりが早いかと思われるかも知れないが、彼等も仕事である。そしてこれは、夢から覚めたことなのであろうか?