野球コラム(バファローズの話)

「近鉄」なのか「バファローズ」なのか?

2004年、大阪近鉄バファローズの命名権売却や合併問題に絡め、時々議論されたことが、「近鉄」なのか「バファローズ」なのか?という関連の議論である。一口に「ファン」と云っても、その捉え方は千差万別であり、議論を展開しても噛み合わないし、下手をすれば喧嘩になり、気まずいことになり兼ねない。かく申す私も、その点で気まずくなった方は多数いる。

バファローズの生い立ちを辿れば、確かに「近畿日本鉄道」という、関西有数の企業が創生し保有し続けてきた。それは「100%子会社」という、所有権を完全に握っている。よって、近畿日本鉄道にしてみれば、自分たちの持分であり、選手や関係者も自分たちの使用人、いや自分たちと一定の契約により結んだ「業務委託契約」先と、何ら変わりはない認識であろう。実際、商法上それは間違いはなく、契約期限が過ぎれば、片方の事情により契約の継続の打ち切りはあっても仕方がないし、中村紀洋のように複数年契約を締結した者に対しては、違約金を支払う義務を負い、そのように対処しているのだから、別段問題はない。したがって、私自身の近鉄に対する感情は「その程度」であるが、やはりマスメディアを通じて「きんてつ」という形で、チームを宣伝し続けていたことと、1999年よりチーム名を「大阪近鉄」としたことで、ややこしくしている。

「近鉄」という名前、私も沿線住民でいる期間が長かったので、電車と野球を結びつけて考られないこともない。実際に、かつては電車に乗車すると、車内放送でバファローズの情報を良く流してくれたし、駅や車両内には多くのポスターが展示され、選手も旅行のパンフレットに登場する機会も多かった。しかし、それは沿線に住んでいたから認識できたことであるし、親会社なら宣伝に使うのは当たり前で、少し大きくなると沿線以外にも「近鉄バファローズ」のファンがいることも認識した。逆に、沿線住民でありながら、阪神をはじめ他球団ファンもたくさんいる。ならば、バファローズも近鉄ではなく、当時本拠地にしていた「日生球場」の持ち主である日本生命や、松下電器産業や三洋電機等、関西の大手企業のようなところに身売りしてしまえば良いとも考えていた。なぜなら、中学生くらいになると少し判ってきて、初優勝したにもかかわらず、本拠地で日本シリーズができなかったのが残念で、「近鉄はセコイわ!」「近鉄はケチや!」と、勝手に思いを廻らせた(実際そうだった)のであった。事実、九州で細々とやっていた「クラウンライターライオンズ」を西武が買収して、埼玉に移転はしたが選手の待遇も良くなり、環境面でも素晴らしくなった。数年後「西武ライオンズ」は、パリーグ1の強豪チームとなったのだから、バファローズも近鉄ではなく、日本生命などに移して、日生球場を大改装すれば良いのにと思った。何しろ、近鉄の所有する「藤井寺球場」は、当時はナイター照明もなく、大阪の都心ではないところだったので、非常に不便だった。

また、大学を卒業するころ、近鉄グループへの就職を一瞬考えたが、やはり辞めた。正直言って、近鉄グループの社員というのが、今でもそうだが好きになれない。バファローズは近畿日本鉄道の100%出資子会社だが、「近鉄百貨店」「近畿日本ツーリスト」「都ホテル」は上場している会社であり、バファローズと資本上繋がっていない。にも関わらず、近鉄グループ社員ということで、数々の優遇を受けているのが解せない。確かに「社員応援会」というものがあって、年会費等を納めているようだが、一般のファンクラブより特典が多過ぎる。アマチュア野球で、自分の会社や学校を応援する場合であれば、そこに所属する者が優遇を受けても構わないと思うが、曲りなりのも「プロ野球」である。近鉄グループ以外の者に対し、ファンクラブや年間チケットを募っているのである。この社員応援会のスタンドでの無作法は大変鼻持ちならず、必要以上の場所取りや、「近鉄百貨店」などと要らぬ宣伝をしたりで、しばしば私設応援団と揉めたことがあった。人によっては、バファローズと近鉄は切り離せないようであるが、私は別段近鉄に拘りはなかった。また、そんなドン臭い近鉄が持っていたから、バファローズが個性的なチームになったということは、決して否定はしない。しかし、それではいつまでも脱皮できず、近鉄に拘ったがため、最後に悲劇を生む結果となったのだ。昭和63年に、阪急と南海が身売りした。そのとき、周囲は「近鉄は残ってくれて良かった」とみな言ったが、私はこのチャンスを逃して残念だった。

では「大阪」という冠だが、個人的には良いと思っている。それは大阪府民であるからということもあるが、それ以上に「一番無難」だと思えるからだ。要は「これが良い」のではなく、「消去法でこうなった」程度である。そうなると、大阪以外の地域のファンの方に反感を抱かれそうだが、ある程度は仕方がないと思う。実際に、「大阪」という名前こそ全国に知らない方はいないだろうし、「大阪限定」ではなく「大阪中心」と考えてもらえないだろうか?プロ野球運営の場合、一番大事なのは「選手」である。その選手が、グランドで活躍するには、家族の支えが必要で、その家族が安心して暮らすには、特定の家が必要である。選手・家族諸共、全国に「旅芸人の一座」のように動き回っていては、体が資本のプロ野球選手の活躍は見込めない。したがって、全国の何処かに本拠地が必要である。何処に本拠地を置くかは、経営上の戦略が含まれるので、経営者が「筆頭株主」の承諾を得て決めればよい。バファローズの場合、筆頭株主が近畿日本鉄道なので、大阪で良いと思うが、これが例えば、徳島に本社がある「ジャストシステム」のような会社が、バファローズを買い取り、徳島県民にプロ野球を楽しんで欲しいというのであれば、徳島に球場を造り「徳島バファローズ」でも良い。実際「大阪近鉄バファローズ」と名付けた時点で、近鉄グループの社員から大いに反発があった。それも「いずれは『近鉄』を外すんじゃ・・・」ということだったが、私は別に構わなかった。むしろ早く「大阪バファローズ」にしたほうが、いろんな柵もなく、もしかしたら他の大阪の有力な団体や個人の支援を、受けていた可能性もあったと思う。

最後に「バファローズ」だが、これは「チームの証」としては永遠に存続させなければならないものであろう。西武ライオンズも、福岡ダイエーホークスも、チームの創生期からの愛称を使い続けて行くことで、多方面から批判を受けず、昔のファンをできる限り受け入れているのである。よって、千葉ロッテマリーンズや北海道日本ハムファイターズのように、「オリオンズ」「フライヤーズ」の名前を捨てた時点で、苦難の道を選ばざるを得なかったし、オリックスブルーウェーブについては、近鉄合併後「バファローズ」とするなど、愚の骨頂である。考えるに、経営側にとって「愛称」というのに拘る必要が、それほど重要なのだろうか?経営する立場にとって、愛称などは何でも良いと思うが、如何なものか?ブルーウェーブに名を変えたから、お客さんがたくさん来たのか?いや、むしろ阪急ブレーブスを愛した方を遠ざけただけだった。実際に、西武もダイエーも、旧球団よりチームマスコットの存在を、色濃く宣伝しているではないか。西鉄ライオンズや南海ホークスが好きだった方も、見売り先球団が過去の伝統を重んじてくれているようで、満足しているのではないか?「バファローズ」という言葉が、好き嫌いは全然関係なく、その存在の証としてあれば良いのである。ただし、合併してできた「オリックス・バファローズ」は、全く性質を異にするものである。また、インターネットが普及して多いのが、「バッファローズ」という表記であり、それ自体は個人的に気にならないが、それをやたら指摘する器量の狭い者が多いのには閉口させられる。

以上をまとめると、私の価値観としては・・・

1・「バファローズ」は不変である。

2・「近鉄」に全くのこだわりはない。

3・地域・都市名は「便宜上」付ける。

ということで、私は「大阪バファローズ」が良かったのである。