生で見た記憶に残る試合
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平成5年6月5日 |
梅雨時の奇蹟 |
6点差の最終回、一気に大逆転サヨナラ! |
対ダイエー |
藤井寺球場 |
もしかしたら、通な方々にはこの試合も語り草になっているかも知れないが、6点差の最終回での逆転試合である。6点差とは言え、9回の表が始まる時点では3点差だったのだが、その9回表に3点を奪われての6点差であるから、精神的ダメージが大きいのだが、なんともやってしまうのが、近鉄バファローズである。
実はこの年は、4月より住み慣れた大阪を離れ、1年間会社の辞令により「岡山市」へ転勤していた。入社して4年、ボチボチ転勤もあるかな?とは思っていたが、それはもちろん、入社前から承知していたことでもあるし、ちょっとした役付とかになれば、他の空気も経験しないとはいけない。特に、1年とは言われなかったが、このキャリアでは慣例上1年が多く、実際その通りだった。よって、この年は近鉄バファローズの試合は、あまり見ていない。それでも、岡山は大阪とそれ程離れていないので、毎月1回のペースで帰っていた。もちろん、藤井寺球場で試合のある週であることは、言うまでもない。よって、ファンクラブには、継続して入会していたが、試合そのものは年間で20試合程度であった。
またこの年は、鳴り物入りでスタートしたサッカー「Jリーグ」が始まり、松下電器に勤務する友人から「付き合いで入ってくれ!」と懇願され、ガンバ大阪というサッカーチームのファンクラブに加入したが、別段興味を示さなかった。それでも、1回くらいはサッカーでも観に行こうかと思ったりもしたが、何せこの年のJリーグの人気は異常で、ロクにチケットが取れない。最も、本気で行こうとしていなかったから、全く問題ないが、私がJリーグを観戦するのは、その数年先になった。
近鉄バファローズも、大きな変化があった。前年まで、5年間指揮を執っていた仰木彬監督が勇退し、満を持して、鈴木啓示監督が就任。この交代は、今であれば「あぁー」となるかもしれないが、当時としては、あくまで仰木監督は「繋ぎ」であって、球団としてもこの生抜きのスーパースターを、監督として迎えるのは、当然の路線であり、大いに期待もした。しかし、やはり現役時代からの「孤高のエース」の印象が強いファンにしてみれば、果たして選手を纏められるであろうか?名選手名監督にあらずという、非科学的な原理もまた、頭を過ったりもした。結果的に、これは「図星」だったのだが・・
平成元年のリーグ優勝から、翌年Aクラス入りはするものの西武の独走を許し、更に平成3・4年とも西武とのマッチレースとなったが、いずれも優勝を逃したバファローズ。戦力的にも、過去に例のない充実した投手陣は、野茂を筆頭に、山崎・小野・高柳を中心に、若手の高村も前年に新人王となり、抑えには若い赤堀がしっかりしてきて、吉井とのダブル体勢。更に、新人の小池も即戦力。石井・ブライアントを中心とした打線は12球団随一であるから、優勝も全く夢ではない。あとは、阿波野の復活と、鈴木啓示監督の采配がどう出るか?が注目だった。もう、キャンプの頃から早速、監督とエース野茂の意見が食い違って、マスコミも面白く囃し立てる始末。しかし、開幕戦で野茂は見事なシャットアウトで、真っ先に握手で迎える鈴木監督にウイニングボールをプレゼントして、その不安を打ち消してくれた(ように見えた)。そして、私は安心して岡山に向かった。
前日私は、業務を終えて岡山駅に向かって帰阪。ちょうどその頃には、実家も狭い大阪市内から、河内長野市に転居していたので、偉く遠くなった。しかし、藤井寺球場に行くには、この方が便利である。藤井寺は、ご承知の通り鳴り物応援は禁止されているので、余り応援席に居るのにも面白味がない。また、そんなに試合も行けなかった年なので、数少ない観戦はちょっと贅沢に、内野指定席に座っていることが多かった。相手はひたすら最下位を走るダイエーだが、近鉄も今ひとつ乗れないでいる。先発投手は、近鉄が入来で、ダイエーは新人の渡辺正和。後に、中継ぎ投手として活躍する投手だが、こりゃ打ち合いやな?というのが大方の見方で、事実その通りになった。
渡辺は、見ての通り「左の軟投派」で、近鉄が最も嫌うタイプ。初回は、水口のヒットが出たが、ブライアントと石井は大振りして無得点。直感的に、嫌な感じになった。一方の入来は、相変わらずの一本調子で、ヒットをよく打たれるが、2回の1点のみで中盤まで抑える。近鉄は3回に、9番中根の2塁打に続き、大石が四球を選ぶと、続く水口が良い当たりだったがショート真正面のゴロ。しかし、ダイエーのショート浜名がトンネルし、中根はもちろん、大石も快速を飛ばして一気にホームインして逆転した。しかし、入来がピリッとせず、5回に簡単に2死を奪って勝利投手の権利目前だったのだが、ジョージ・ライトを四球で出して藤本にヒット、続く岸川にど真ん中に投げ込んで、当たり前のようにレフトスタンド上段に叩き込まれた。スコアは2−4、ここで入来はKOだが、強気も良いが、無謀さは私が岡山に行っても変っていなかった。
続く2番手佐野も、6回に浜名にタイムリーを浴び2−5。3番手の新人小池は、まずまずだったが、一方で近鉄打線は、渡辺を全く打てなくなっている。このパターンは、まさに無造作な三者凡退ばかりで、それもタイミングを全く外されたポップフライばかりで、眠たくなる展開となった。7回から、怪我で戦列を離れていた吉井が登板。ここのところ、抑えのエースの座は、若い赤堀が手中にし、ちょっと不貞腐れ気味の吉井。汚名返上と行きたいところだが、毎回のようにヒットを浴びる内容。それでも、7回二死から吉永にヒットを打たれるも、盗塁を試みられたが、古久保が見事に刺し、流れがこちらに来ると思った。しかし、そのラッキーセブンも、村上・古久保の代打光山・中根が、みんな一発狙いで凡退。こうなると、古久保が見事刺したのではなく、吉永の盗塁自体が無謀なのだと思える。何とか8回もゼロの抑えた吉井だが、9回にまたランナー二人を背負って、岸川に力でライトスタンドまで持って行かれてしまって、ここで万事休す。スコアは2−8で、それなりにお帰りになるお客さんも出て、完全な負けムードだった。
最終回のマウンドに、大量点に守られた渡辺が上がった。この日が、渡辺にとってプロ初先発で、初勝利も目前であった。そんなことを意識したのか、この回の先頭4番の石井が四球で出塁し、代走は新人の内匠。続く鈴木貴久が、豪快に左中間を割り1点を返して3−8。続く村上は四球で出塁し、おいおい、もしかしたら?という期待を抱かせたが、ここでダイエーはピッチャー交代。なんと、当時の抑えのエース池田が登板したので、あーもうあかん、という空気だった。ま、それでも無死1・2塁で、打席には吉田に替わって代打は新人の大島が登場。その初球、池田の何でもないカーブのすっぽ抜けのようなボールを、大島はしっかりと踏み込んで、左中間を割りもう2点追加で5−8。それでも、3点差である。打順は下位に廻ったが、光山の代打安達も、綺麗にセンター前に弾き返して、大島がホームインして2点差となった。こうなると、スタンドは俄然盛り上がってくる。中根に「一発」が出れば、たちまち同点なのだが、中根もきっちりとセンター前。アウトカウントはまだノーアウトで、ランナーは1・2塁。ここでトップに帰って、大石大二郎の登場である。スタンドのボルテージは最高潮で、大石の快打一発を期待する。しかし、期待の大石はショートゴロで、中根が2塁でアウトとなり1死1・3塁。続く2番水口は浅いセンターフライで、これでは幾ら俊足の安達でも帰れない。それでも、2死1・3塁となったところで、得点差は2点差。ここで登場するのが、ラルフ・ブライアントである。しかし、もうこの頃の私には、スタンドの盛り上がりとは裏腹に「あぁ、歩かしやな」というのが判る。そりゃそりゃ、物凄いブーイングの嵐であったが、まあここは満塁策は常套手段で、何もラルフがいつも打つとは限らないし、ラルフと石井のどちらかが打てばと、敬遠中考えていたが、ここで「ハッ!」と気付いた。「そや、この回石井には、代走が出とったんやぁ!」まだまだやなあと、そんな野球に未熟な自分を悔やんでいた。つらつらと、ベンチ入りのメンバーを考えていたが、金村はこの日練習中怪我するし、期待の若手中村も2軍、巧打者新井は去年で引退。あぁ、こら厳しい。しかし、代走の内匠がそのまま出てくるかと思いきや、鈴木啓示監督は代打を告げる。大野明子さんのアナウンスに耳を傾けると「代打山下!」のコール。おいおい、内匠で良さそうだったが、えぇいもう何でもえぇワイ!ってな感じで、捕手の山下が打席に向かう。
山下は、期待に違わず初球を豪快に空振り。期待の声援と、罵声のヤジと、笑い声が入り混じった藤井寺。そうそう、これこそが何よりも藤井寺らしい雰囲気である。しかし、私はこの場面で、躊躇わずスイングする山下に、ほんの少しだが期待はした。「山下、選ぶな、打て!」そして、山下もきっちりセンター前にタイムリー。2塁ランナーは、こんなときに有難い大石大二郎。タッチを掻い潜って同点!しかし、1塁ランナーのブライアントが、結構ムチャして3塁へ走る「おい、何すんねんラルフ!」当然、キャッチャーから3塁に送球されたが、何とその送球がブライアント自身に当ってしまい、ボールはファールグランドを転々。ブライアントは、一目散にホームへ向かって走り出し、最後はヘルメットが脱げそうになりながらホームイン。逆転サヨナラとなった。
記録上は、山下の打点でサヨナラではないが、ムードとしてヒーローは山下だったので、お立ち台にも山下が立った。8回まで、途方に暮れるような内容で、丸っきり渡辺を打てなかった近鉄だが、最終回突如として目を覚まし、一気にツキまで呼んで、サヨナラ勝ちしてしまった。これで、一気に波に乗って欲しかったが、世の中上手く行かないものであることは、もう少し先なって理解することになる。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
| ダイエー | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 3 | 8 |
| 近鉄 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6× | 9 |