生で見た記憶に残る試合
| 9 | 平成13年10月21日 | 事実上の優勝決定 | 12年振りのVへ、ミラクル復活。 | 近鉄 9−6 ヤクルト | 大阪ドーム |
12年振りの優勝、即ち12年振りの日本シリーズ観戦となる。前回の優勝が、社会人1年生であったから、社会人になって13年目となっていた。対戦相手は、ヤクルトスワローズ。ここ数年、野村克也前監督の元「ID野球」というスローガンで、着実に力を付け、過去10年でリーグ優勝4回で日本一3回と、12球団で最も安定した力を持つチームである。その中心が、言わずもがなの古田敦也捕手であるが、実は私にとって大学で1年先輩にあたるのである。学生時代の古田さんは、学内ではそれほど目立っているわけではなかったが、4年時に主将となり春の関西学生リーグで優勝し、日米大学野球のメンバーにも選出され、俄然キャンパス中の注目の的になった。そして、ドラフト時にプロ野球から指名間違いなしとのことで、朝から報道関係が押し寄せていた。しかし、残念ながら指名はなく、社会人を経由してプロ入りした。学内誌のインタビューで、古田さんが子供の頃憧れた選手は「近鉄の梨田選手」と答えていたのを見て、是非古田さんにバファローズに入団して欲しいと思った。当時は、古田さんがこれほどの大選手になるとは、全然感触がなく、もし大学卒業時にバファローズに入団していれば、球団の歴史も変わっていたであろう。そんな古田さんが中心のスワローズ、私も年を取ったのか、何がなんでも勝つ!と言うより、久し振りの日本シリーズを楽しみたかった。スケジュール上、週末は大阪ドーム、平日は神宮であり、逆であれば私も週末東京遠征できたのだが、さすがにこの時期会社を休めず、大阪ドームでの1・2・6・7戦のチケットを手に入れ、ひたすら開幕を待っていた。
第1戦を、相手石井一久に成す術なく敗れ、迎えた第2戦。昨夜のことは全く忘れ、ここを取れば有利になるであろうと思った。先発は、ヤクルトは最多勝の藤井、こちらは高校を出て2年目の岩隈であった。新聞紙上でも、岩隈であることは予想されていたが、私はキャリアのある高村で行って欲しかった。まあ、結果的に岩隈は貴重な体験を、1年先輩の西武松坂より早く経験することになるが、案の定早々に勢い付いているヤクルト打線に捕まり、3回持たずに4失点を喰らった。
このシリーズ、私はいつもの外野自由席ではなく、内野それもかなり良い位置での指定席で観戦している。昨夜は、全く盛り上がる場面もなかったが、大阪ドームに移ってから、近鉄ファンも大人しくなったなと感じた。藤井寺時代、ネット裏やベンチ上の席には、必ず野次の大将のような方がいて、2回凡退しようものなら、痛烈な野次が飛んでいたものである。それは、日本シリーズのような試合でも一緒であった。しかし、大阪ドームのこのシリーズ、そんな方は全く見られない。唯一、ショーンギルバートが打席の時、タオルマフラーを使った応援、通称チャンス2の応援の場面で、私と連れがタオルを振っていたが、周りはもの珍しそうに、遠慮しながら見ていた。何とも、上品になったものである。しかし、今日は雰囲気が変わり、ユニホームを着ている方や、メガホン等のグッズを持った方もチラホラ見えていた。そして、4回に中村紀洋が、これまた凄いライナーで追撃のソロを放つと、周囲の方も立ち上がって拍手を送っていた。そんな姿を見て、要は内野席の方も外野と同様盛り上がりたいけど、盛り上がり方を知らないで躊躇しているのが判った。ならば、遠慮せずみんなが盛り上がれるよう、私たちもかなり大きめの声で話すことから始めた。
試合は2転3転、5回チャンスで水口が打席に立ち、ヤクルトも島田直也をマウンドに送る。その間のインターバルで、外野席の動きを見て、チャンス2が行われることが判った。私は、少々大袈裟にタオルマフラーを掲げ、後ろの方に立つことの許可を得た。すると、後ろの方々も急いでタオルを買ってくるとのこと。そして、この指定席でも結構の数の人がタオルを廻して応援、持っていない方も手拍子で応援、そんな期待に応えたのか、水口の打球はいい角度で左中間方向に飛んでいる。でもまさか、水口が?そんな思いも吹き飛ぶ、見事な同点3ランであった。もう、周囲は大いに盛り上がり、前後左右の見知らぬ方々とハイタッチ、まるで外野席にいるときと同様な雰囲気になっていた。そして、この回が終了すると。周囲の方々の多くが、コンコースに出てタオルマフラーを購入しているのが判った。そうですよ、まだ同点試合はこれから、せっかくみなさんが購入したタオルマフラーを使う場面が、絶対来て欲しいと願っていた。
昨夜と変って、投手交代も多く、試合は重苦しく進む。しかし、これはバファローズのペースである。古田さんもさすがで、この試合も3安打猛打賞である。何しろ、打線では近鉄が上だが、4番のぺタジーニの実績は、ローズと比較しても遜色がなかったので、とにかくぺタジーニ要警戒。そして、その後を打つ古田さんに、痛い目に遭う。ここらが、近鉄投手陣の途上なところだった。6−6の同点で、試合は8回、ヤクルトは五十嵐が出てきた。五十嵐は、ド偉いスピードボールを持っているが、とにかく真直ぐばかり。これなら、いてまえ打線の餌食になると思った。的山が四球を選ぶと、水口も得意の右打ちで1・3塁。そしてローズを迎えたところで、いよいよ再びチャンス2のファンファーレが奏でられる。そして、前の方でタオルを掲げる方を見て、先ほど購入してきた方々が、待ってましたと、新品のタオルを次々に掲げ、総立ち状態になった。おお、これが内野指定席かと思うくらい、みんな一所懸命に見よう見まねでタオルを廻す。ローズよ、この大阪ドーム開場以来最大級の声援に応えてくれ!
1球目を空振りしたローズは、何か唖然とした表情で打席を外した。それは、この回ストレートしか投げなかった五十嵐が、初めて投げたフォークであった。当然ローズも真直ぐを待っていたが、何とも古田さんのリードである。ここまでフォークを封印させ、初球からタイミングは外させ、ローズを混乱させる作戦。ローズは何かを振り払うかのように、素振りを繰り返し、何か納得した仕草で再び打席に入った。そして、2球目の真直ぐを振り遅れてファール。ここまでは、完全に古田さんのペースだ。「ローズ、古田さんに負けるな!」思わず私も、タオルを廻しながら声を出した。みなさん、タオルの廻し方をマスターしたようで、「ローズ!ローズ!」の声援も大きくなる。しかし、ローズも物凄く集中している。そして、1球ボールのあと、再びきたフォークにローズのバットが、ドンピシャのタイミングで捕えた。打った瞬間、ボールは物凄い勢いでライトスタンド目掛けて飛んで行き、ローズも打球を指差した。ライトスタンドの上段の上の方に、ライナーのまま突き刺した。ローズは、バットを真上に高々と放り投げた。
結局、この試合がこのシリーズの唯一の勝利になってしまった。1勝1敗で、神宮に乗り込んだが、そこで3連敗してしまう。東京に行けなかった私は、3試合ともテレビ観戦となったが、何か切ない思いもあった。最後の第5戦、試合中左手を怪我した水口が、それでも出場し続け、最後の打席ではバットを振れなかった。シーズン中、あんなに大当たりした礒部はノーヒットで終わった。最後の攻撃のとき、ローズは人目を憚らず泣いていた。大村は最後の打者にならないよう、意地のヒットを打った。最後の打者藤井は、何球も高津のシンカーに喰らい付いて粘った。藤井はキャッチャーフライで、古田さんがウイニングボールを掴んで終わった。まだ、このチームは、王者ヤクルトに比べキャリアが浅く。初めて日本シリーズに出た中村紀洋と同い年の石井一久は、過去何度もシリーズで投げ結果を残している。最後、大阪に戻ってきて欲しかったが、岩隈など若い選手も出てきているので、来年以降も楽しみであると思った。